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身延の山小屋

身延で何日か休日を過ごしたことがあります。 富士川から離れて、支流沿いに細くて険しい山道を車で登ること数十分。 狭い峡谷がぽっかり開けたところに小さな集落があります。 夜に到着すると漆黒の闇で、懐中電灯なしでは歩けません。 空には満天の星がきらめきます。

身延での滞在先は「山小屋」
山小屋の管理人さんは、かつて集中豪雨の時に土砂に襲われた家をこつこつ修復してこられた方です。
普通の和風建築の家を「山小屋」と名付けられたのは、この管理人さんです。 土砂に襲われた時は、当時その家に住んでいたおばあちゃまは、たまたま山から下りていて命が助かったそうです。 電気やガスはあるけれどお風呂はなくて、使っていない部屋にはまだ土砂崩れの跡が残り、 電話はなくて、DoCoMoは圏外。 夜は囲炉裏を囲んで飲んだり食べたり、朝は山の空気を吸いながら散歩に出かけて野の花探し。 家の修復手伝いと称してお邪魔して、屋根のペンキ塗りをしたこともありました。 都会生まれ都会育ちの私にはなかなかできない経験で、何回も心なごむ時を過ごさせてもらいました。

山小屋の管理人さんはやがて、長年勤め上げた会社を定年退職しました。 「これからは山小屋に行きたい時にはいつでも声をかけて。 これまでより時間ができるから、都合がつけば連れて行けますから」と言ってくださいました。 管理人さんご自身も、電話もインターネットもない山小屋で休日を過ごすと、本当にのんびりするとおっしゃっていました。 でも、なかなか身延まで行くチャンスはつかめず、この数年はすっかりご無沙汰。 先々週には国道52号を走って山小屋のすぐそばを通過して、また行きたいなぁと話しました。

昨日の午後に訃報が届いて、山小屋の管理人さんが旅立たれたことを知りました。 入院しておられることを知ったのが先週。 でも、そんなに悪い状態であるとは知らなかったので、突然の訃報に驚きました。

身延の山小屋で過ごした時間は宝物です。 管理人さんのお人柄のおかげでできた宝物。 またお会いできなくなったことはとても残念で寂しいけれど、闘病を終えての安らかな眠りを心から祈っています。

(2008年2月21日記)
「山小屋」から見た風景

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